致死量の砂糖菓子
[比嘉麗子 6](1/5)






赤ばかりのなか、
ひとつだけ浮き出る黄色いリボン。


廊下に出て、先輩が話し始めるまでの数秒間、あたしはそれを睨み付けていた。



「…あの、比嘉、さん」

「…なんですか」


ぴしゃり、
叩きつけるように返事をする。

少しでもこのひとが あたしを恐れていてくれればいい、だなんて
あたしはまだそんなことを考えてしまう。


……彼女が
あたしを怖がるほど、
そこまで気の弱い人間じゃないことは、この何度かの会話で知ってはいるけれど。



「お願いが、あるの」



……なんだか、
やけにまっすぐな瞳。

強い意志が籠ってるみたいに見える。






あたしは返事の代わりに、視線をぶつけた。




「あのね、」

少し、迷ったように。

だけれど 決心するみたいに。




焦らしながらゆったりとくちを開いた先輩は、



「一緒に、行ってほしいところがあるの」




と そう、言った。





「行ってほしいところ、ですか」

オウム返しすると、 こくり とうなずく先輩。


「…あのね、」

「___イオのところ、ですか」



彼女の声を遮って
そう予想する。








先輩と、私。
このタイミング。

何処へ、とは言わなくたって、私を連れていきたい場所なんて たかが知れている。


それが分からないほど、私は鈍感じゃないし、
馬鹿でもない。



びっくりしたように目を丸めて、
そうして頷いた先輩。



「そう、北見さんのところにね、
行きたいの」












___イオのところへ行こう、


いつかは そんな展開になるのかもしれない、と 予想ができていた。


こんな曖昧な関係には
終わりが存在すること、

あたしも先輩も、分かっていたから

だからいつか、
どちらかが 3人で話し合うことを提案するのかもしれない、と 思っていた。



……だとすれば

それを持ちかけるのは、恐らく先輩のほうだろうということも。









だから、

あたしも最初っから、返事は決めていた。



…自分を守るためだけの、
そんな醜い決心を。





「…あたしは、行きません」





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