「レイ?」
ぼやけた思考回路が 急に遮断された。
思わず紙パックを落としそうになる。
考え事をしていたのを悟られないように
なんでもないような顔をして しゃべりかけてきた友人に視線を向ける。
不思議そうな表情が、あたしを見つめていた。
「あー、ごめん、なに?」
「いや…大した話じゃあ、ないんだけど。
それより、ぼーっとしてたけど、なんか調子でも悪いの? 身体の具合、とか」
……調子が悪い、といえばその通りだ。
ただ、身体の、じゃなくて 憂鬱なココロの。
なにをしていたって脳裏に浮かぶのは あたしの『恋人』だけで
それが、今はすごく不安材料で。
だけれど そんなこと、自分からは言えやしなかった。
調子悪い?の一言で 恋人との仲を
___恋人に浮気されている事実ならなおさら、
説明できるほどの楽天的な思考を
生憎あたしは持ち合わせていない。
だから 心に疼く色々を ぐ、と押し込めて
口角を無理矢理にでも、上に向けた。
「だいじょうぶ、だよ」