致死量の砂糖菓子
[比嘉麗子 5](1/5)







「レイ?」


ぼやけた思考回路が 急に遮断された。
思わず紙パックを落としそうになる。

考え事をしていたのを悟られないように
なんでもないような顔をして しゃべりかけてきた友人に視線を向ける。

不思議そうな表情が、あたしを見つめていた。



「あー、ごめん、なに?」

「いや…大した話じゃあ、ないんだけど。

それより、ぼーっとしてたけど、なんか調子でも悪いの? 身体の具合、とか」




……調子が悪い、といえばその通りだ。

ただ、身体の、じゃなくて 憂鬱なココロの。



なにをしていたって脳裏に浮かぶのは あたしの『恋人』だけで

それが、今はすごく不安材料で。



だけれど そんなこと、自分からは言えやしなかった。
調子悪い?の一言で 恋人との仲を

___恋人に浮気されている事実ならなおさら、


説明できるほどの楽天的な思考を
生憎あたしは持ち合わせていない。




だから 心に疼く色々を ぐ、と押し込めて

口角を無理矢理にでも、上に向けた。



「だいじょうぶ、だよ」






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