致死量の砂糖菓子
[浅野由美子 3](1/5)





「 浅野先輩って 貴女ですよね 」



凛とした声で私にそう告げたその子は
はっきりした目鼻立ちをしていて

堂々とした雰囲気からか
同じくらいの身長のはずなのに
随分と背が高く見えた。



ふたつ下の学年の赤リボン。


髪の色も スカートの丈の長さの
ひとつひとつが すべて
自分の容姿に最も相応しいものを
選んだ模範解答のような子だ。


後輩であろう彼女に
まっすぐそう告げられて
躊躇いがちに首を縦に振る。


迷うことなく 彼女は言葉を続けた。



「 単刀直入に言います。
イオと別れてください 。」



イオ、と呼ばれたその名前が
愛おしい彼氏の愛称なのだと気付くまで
要した時間は十数秒。




「…北見さん、のこと?」

「そうです、北見伊織。




北見さんなんて呼び方してるくらいなら
まだ 引き返せる関係程度ですよね、

イオは私の彼氏です。


なんてイオに言いよったか知らないけど
ひとの彼氏誑かすなんて サイッテー。」




吐き捨てられたガムみたいに
くしゃりと潰された言葉の粒子が

理由を持たないまま私を抉る。


突然の出来事に 思考が未だ追いつかない。



_______たぶん 、 この子は。


この子は自分より私が 劣っている って
思ってるのだろう、きっと。



哀しくて醜い事実は
目の前をすり抜けて

やけに客観的に見えてきた。



私は熱を持たない声で 彼女に返事を紡ぐ。






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