致死量の砂糖菓子
[浅野由美子 2](1/5)


少し車を走らせた後
北見さんが車を停めた。


あたたかい雰囲気のあるお店だ。


私が降りる前に先回りして
助手席のドアを開けてくれる彼の
手慣れた対応に未だに慣れはしないが

抱きしめられたときみたいに
大事にされてる実感がするから、好き。





「ふふ、ありがとうございます。

ねぇ、北見さんくらいの年の男性って
みんなこういうこと自然にしちゃうの?」

「こういうことっていうのは?」

「助手席のドア 開けてくれること、とか」



あぁ、と笑いながら
今度は お店のドアを開けてくれる。



ほら、こういうとこだよ と言うと
「女の子に優しくするのは当たり前」
なんてことを言うから、
悲しくなるくらい 北見さんは大人だ。



席について ひとつ 息を吐く。
目移りしてしまうほどの品数だ。

色とりどりのスープのメニューが
思いきりストレートに光を放つ。

私は先ほど思ったことを口にした。



北見さんって大人ですよね、すごく」

「なに、突然どうしたの ゆみちゃん。」

「なんていうか、立ち振る舞いが
やっぱり教室にいる男子とは
ひとつひとつ 違うなぁって。」



当たり前だよ、年が違う。と言って
少し腰を浮かせた彼が 手を伸ばして
私の額をコツン、と軽く小突いた。



ハタから見たら こんなの、バカップルだ。


でも、



ほんとうに ばかみたいにお互いのこと
好きなんだから 仕方ないよね なんて



誰に言い訳するわけでもないのに
心のなかで そっと呟く。









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