WAR
[一人の兵士](1/2)
無数に存在するであろう兵士。俺はその中の一人だ。砂浜を軍隊としたら俺はその中の砂粒の一つでしかない。しかしそんな砂粒にも物語がある。

俺は産まれた時、母親の顔を見て笑ったそうだ。父親はどうしたって?そんなの決まっているだろ。

幼少期は戦時中と言うこともあり不安定な生活が続いた。ろくに学ぶことも食べることも出来ずに、貧しい生活を送った。そんな中俺は母親を失った。数人の男から強姦をうけその上殺された。親の居ない子供がこの世界で生き抜くには、盗む以外になかった。丸一日町を駆け回り、その日の食料を手に入れる。それの繰り返しだ。

この時俺は自分のことを不幸な子供とは思わなかった。それが当たり前だった。

そして俺が15才になった頃のことだ。俺は兵士になった。身寄りのない子供でも兵士にはなれた。武器の扱い方や近接戦闘の方法を学んだ。この時に読み書きも独学で学んだ。そうしなければ他の兵士に付いて行けなかったからだ。

必死にあがいた。訓練は辛かった。食料も幼少期と大差なかった。寝床もベッドなんて与えて貰えなかった。しかし仲間ができた。同じ苦悩を共有して、緩和することのできる仲間ができた。

そして一年後俺達は戦場に向かった。木々をかき分け、ゆっくりと目標を目指す。6人を一つの部隊して行動していた。

俺のような新兵にナイトビジョンやサーマルゴーグルのような便利な装備は与えられない。部隊長とその補佐役だけがそれを持っている。俺達はその二人を肉眼で必死に追いながらゆっくりと前に進んだ。

一歩、一歩。ゆっくりと音を立てないように進んだ。

そんな中俺の左横で金属がぶつかり合う音が聞こえた。そしてそれに続いてバサッと何か大きなものが倒れる音が聞こえた。

同時に隊長のハンドサインが目に入った。

(伏せろ)

俺は命令通りに匍匐した。その時あの左側で鳴った音の正体が分かった。

匍匐した俺の横には、ヘルメットを貫通して頭に穴の空いた友人の姿があった。

今まで辛い訓練を共にした友人が、あっさりと死に横で倒れている。分かってはいたが不思議な光景だった。



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