四十九日

 島村鷹斗 (40/40)
 


何とか振り切ることに成功したようだ。


鷹斗はそれでもスピードを緩めることなく車を走らせた。


何とか電話が通じる場所まで移動して、連絡を取りたい。


ポケットからスマートホンを取り出して確認すると、やはりいつもLTEの表示がある場所がHの表示で、しかもゲージのところが赤いバッテンになっている。


「クソッ!」


おそらくもう5kmは下らないと、電話は繋がりそうになかった。


それにしても……さっきの女は何だったのか?


どうみても幽霊なのだが、ちゃんと足はあったし、瞬間移動をすることもなく追いかけてきた。


普通に考えれば、あの女が萌の母親だろう。


――ゾクッ。


何とも言えない寒気が背筋に走り、背後にイヤな気配を感じた。


とっさにバックミラーを見たけど、何も映っていない。


ホッとしながらも助手席側を見た鷹斗の目の前に、あの女がいた。光のない冷たい目でジッと見つめている。


「うわぁあああああああああ」


鷹斗は焦ってハンドルを切り、そして車は道路と並走して走る川の谷底へと真っ逆さまに転げ落ちて行った。



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し お り
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