白い手
[やっつめ](1/2)
その時の女の目玉。
鏡に映ってるのはその目玉に違いなかった。
ということは、○○生命ビルから落ちて死んだ女はあの女だったのか?
落ちて死ぬ前に俺と目が合ったのは、たまたまじゃなくてずっと俺を見てたからなのか?
死ぬ直前まで、その瞬間まで。
いや、死んだ後も。
全てが繋がった気がしたその時、胸の真ん中あたりに焼け石を突っ込まれたみたいな痛みが走った。
鏡を見るとあのどす黒いアザが左の胸に手を伸ばすみたいな形になってる。
指先は何かをつかもうとしてるみたいに曲げられて、ゆっくりと俺の胸の上を動いてる。
その指先が一本、とうとう左の胸にかかった時、どくん!と心臓が変に脈打ったんだ。
そしてもう一本の指先が動くと、またどくん!と心臓が脈打つ。
息が苦しくなって、額から脂汗がだらだら落ちてくる。
鏡を見ると、真っ青な俺の顔のすぐ右横に、あの目玉がぴったりと並んで俺を見ていた。
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