『心 音』
1/16 『序奏夜』
10m先の交差点には、頼りなさげに光る街灯が立っている。
まるで……
終電の電車の中……
コックリこっくり居眠りしてしまった乗客が、ふと我に返り姿勢を正すように……
時折、チカチカと消えてはまた路面を照らす。
人通りのほとんど無いこの路地に役に立っているのか?
人通りがないからこそ、防犯の意味で必要なのか?
街灯自身も本来の意味を忘れそうに見えた。
その頼りなく首をうなだれた薄い橙色のスポットライトのちょうど真下。
右手に何かを鷲掴みに差し出すように立つ青年がいる。
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