Say Hello 〜しるし〜


その、しるし(1/3)

 ……スミカside


……彼と会えたのは、兄様が旅だった次の日の午後だった。


街はもう直前に迫ったクリスマス一色だ……無事に平穏が戻ってきて、本当に良かったと思う。


だけど、自分も彼も、気は重かった。


彼を通した応接室に、ウェスターの戦師であるアオイがお茶を運んできてくれた。


彼女が退室してから、彼はおもむろに口を開く。


「……すまね。

忙しいのに、無理言ったな」


「……ううん。

私の方こそ。

恥ずかしいところを見せてしまって」


例の、夜明け前の電話の一件を言ったつもりだったんだけど、彼は笑いを浮かべながら返してきた。


「えー?

電話だったから、見えてませーん」


……ビーストキラーに襲われている最中に、通信で自分が彼に言った言葉だ。


思わず自分も笑ってしまう。


そして、異世界の未来からの珍入者、彼女の目的、兄様を連れていった経緯……などなど今回の騒ぎについてこちら側からの見解を一通り話した。


彼は、難しい顔をして黙って聞いていた。


長い長いその一連の下りを語り終わると、彼は自分に、辛かったな、と言ってくれた。


泣きそうになったから、お茶を頂いて誤魔化す。


「……まさか、私に……次期国王がまわってくる、なんてな。

人生何があるか、本当分からないな……」


「………」


「……いや、兄様のことは、もう仕方ないと思ってるし、踏ん切りもついた。

父様がまだまだ現役でいらっしゃるから、すぐさま王になれと言われてる訳じゃないし。

でも……!」






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