Say Hello 〜しるし〜


不思議な彼女(1/14)

 ……スバルside


ノーゼン次期国王。


これが自分に課せられた未来であり、それは運命であり、そして必然だった。


王の元に長男として生まれた以上、当たり前のことかもしれない。


自分は、この国……ノーゼンが大好きだし、この国がもっとよりよく発展していけばいい、心からそう思う。


それでも。


正直、王にはなりたくはない。


父様のことは、国民に慕われた素晴らしい国王だと思ってる、尊敬もしてる。


だけど、自分も父様のようになりたい、とは思えない。


20歳を越えたれっきとした大人が、我が儘をいってはいけないことも分かっている。


それでも、自分は。


自分がまだ幼少の頃に、行方知らずとなってしまった母様のように。


……学者として道を極めたい、その思いをどうしても捨てることが出来ないのだ。


その点、3つ年下の妹スミカは。


父様に似て、正義感に溢れて勝ち気で、武術に長け、国民にも慕われていて。


あいつこそ、次期国王に向いているし相応しい……それなのに。


妹は知らないだろうけど、以前自分は立ち聞きしてしまった。


父様の親友とかいうウェスター国の前国王が、『会見』という名で父様と酒を交わしに来た際の会話を。


なんでも、現ウェスター国王……前国王の一人息子だそうだけど、彼がスミカに惚れている、とかで。


どうだ、ウチに嫁に来ないか、と前国王は言い、父様も割とその気になられていたように見えた。


別に自分、シスコンという訳じゃない、妹が幸せになれるなら結婚だって悪いことではないだろう。


……だけど。


そうなってしまったら、……ますます自分の道は確定してしまう。


自分は、……自分の思いは。


捨てざるを、得ないのか……。






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