『あきちゃん』
[◇憑依](1/1)
署内の取り調べ室――――
庸平の時と同じ警官がドアの前に立っている。
晶仁達3人は田島が戻って来るのを待っていた。
「お待たせしました。では、もう少し立ち入った話をお聞かせ願いたい。」
戻ってきた田島がそういって、三人に向かい合った。
「まず、近藤さん。
貴方の家は『峯引寺』という人形供養のお寺だそうで?
これは完全に私の興味からですが、その時も霊的な現象が起こったと渡辺さんが言っていましたが―」
「えぇ、峯引寺で庸平と私を除く全員が私の父からお祓いを受け、それから私とミカ以外が庸平のお見舞いに行きました。
そして私とミカは、親父の助言で離れにある暴走した人形達から逃れる為の部屋に避難したんです。
彼女がミカを取り戻そうとやって来るのは分かっていましたから。
そして何分か後に、部屋が揺れ始めた。案の定、『あきちゃん』が寺中の人形を引き連れ、ミカを取り返しに来たんです。
2時間くらい続きましたが、やがて諦めたのか、帰って行きました。
……それから……」
晶仁が言葉を詰まらせる。
代わりに、ミカが話し始める。
「それから、私と晶仁は両想いであった事に気付き、早苗に抱き合って口づけを交わすところを見られてしまったんです。
早苗が飛び出して行き、そのすぐ後に貴方がやってきました」
千夏は驚いて二人を見たが、やがて視線を下に戻した。
「そうでしたか……晶仁さんにとっては辛いことだったでしょう」
『ふざけるな……』
急に聞こえた低い声に、田島、ミカ、晶仁の三人は驚いて千夏を見る。
千夏は白目を剥いて、ミカの首を絞めようとしている。
『返せぇ……返せぇ……晶仁を……』
「やめなさい!君!!」
佐藤と田島と晶仁がミカの
首を絞める千夏を引き剥がそうとするが、
『離せ……返せ!!死ね!!!』
とても女性とは思えない力だ……。
酸素の供給が止まっているミカ、引き剥がそうとする田島と佐藤までも顔が青ざめて来る。
その時。
「臨兵闘者皆陳裂在前 臨兵闘者皆陳裂在前(リンビョウトウシャカイヂンレツザイゼン)」
晶仁が念仏らしきものを唱える。
やがて動か無くなった千夏は、ガックリと田島と佐藤に抱えられた。
ふう……と脱力する4人。
「大丈夫か?」
晶仁の低く心地好い声がミカに広がる。
「うん……早苗ちゃん……」
「………」
晶仁の頬を涙が伝う。
……今のは、伊藤早苗が?
「もはや私達の手に負える物では無いようだ……しかし……信じられない……」
今起きた憑依を見て、田島と佐藤は驚きを隠せないでいる。
余りにアッサリと事を沈めた晶仁の霊力にも……。
その後、晶仁の実家で早苗の霊を供養しようとしたが、もう既に『あきちゃん』が早苗の魂を取り込んでしまった後だった。
『あきちゃん』はどんどん残虐になってゆく。
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