『あきちゃん』
[◇終焉](1/2)
 そして、当日。

 『あきちゃん』は準備を整え終えていた。


『待っててね、ミカ……』










 一方の晶仁達も、明史の時と同じように、まだ血の生臭さが残った白い部屋で、準備を整えていた。

 だが、明史の時とは違い、巫も藁人形もいない。

 ミカ達はそれが気になったが、言われた通り正座し、晶仁の指示を仰いでいる。

 全ての準備を整えた晶仁は、あきちゃんの襲来を待っている。











 部屋の真ん中には蝋燭の火が怪しく揺れている。
カタカタカタ……。


部屋が鳴りはじめる。


と同時に晶仁が経を唱えはじめた。


 すぐに『あきちゃん』が姿を現したが……、




『久しぶりだね、ミカ』




 嘘……千夏?

 ミカの目の前に居るのは、あの千夏だった。

「ミカ、何を言われても耳貸すんじゃねえぞ!」


 晶仁が直ぐさま叫ぶ。


『ねぇあたし達、友達だったよね……助けて、あたし、この人形に取り込まれちゃうの』


ミカは無視を続ける。
『ねぇ、ミカ?聞いてるの?


ミカ?


聞いてるのかっていってんのよ!!!』




 千夏が叫びだす。


「分かっただろ?これはあいつの罠だ。千夏達は、とっくに取り込まれてる。もう死んでんだ!いいな……口聞いた途端、俺らは負ける!」


 次に、千夏の顔は、早苗に変わった。

『ねえ、ミカ…晶仁のこと、もういいから。
だから、お願い……千夏はもう、取り込まれちゃったわ……あたしを助けて……ミカ……ミカ……』

 耳を塞ぎ、首を振るミカ。
瞳には涙が溜まり、こぼれ落ちそうになっている


 顔は明史に変わり、最後に香織に変わった。





『ミカ……。

今まで……ごめん。
あたし、知ってたよ。ミカの過去……。
黙っててゴメン。
でも、あんたとはずっと友達で居たかったんだ。
あんたが辛い思いしてるの知ってたけど、気付かないふりしてなきゃ、あんたが離れていくような気がして……周りに面目が立たなくて……。
あんたの辛さ、知ってて支えてあげられなかった……。
あたしの事なんか、見捨ててもいい。晶仁君の言う通り、あたし達はもう取り込まれてる……。
それよりね、晶仁君死のうとしてるよ。
自分の命と引き換えに、あの人形を葬るつもりなんだ……』


止まらない涙が次々と溢れていたミカは、その言
葉に顔をあげ、香織の方を見た。


「ダメだ!耳かすんじゃねえ!」

『ミカ、晶仁君はそう言ってるけど、解らない?晶仁君の体、しんどそうでしょ?段々薄くなって……』



 確かにそうだ……晶仁の様子がおかしい。
「違う!!ミカ、ちょっと疲れてるだけだ!言うこと聞いてくれ!頼むから!!」


『あんたの後ろ、蝋燭があるでしょ!それを消して!儀式が中断されるわ!これじゃ貴方は勝てない!晶仁君が死んじゃう!』

「ミカ!!止めろお!!!!!」






 気付けばミカは、蝋燭を手で叩き付けてしまっていた。

 スローモーションのようにミカの体が崩れ落ちる。

 そして瞳がゆっくりと閉じられた。



「ミカっ!!」



 直ぐさま駆け寄り抱き抱えた晶仁と、口を真一に結び、見当たらない人形を睨めつけ探す庸平。
何処からか『あきちゃん』の声が聞こえる。


『残念だったねぇ〜、ミカはあたしのなの〜貴方なんかには渡さないから〜ギャハハハハハハハハハハハハ!!』


そう言って、木魂だけを残した『あきちゃん』は消え去っていった。

 ミカの死に顔は、人形に呪い殺されたとは思えない、とても安らかなものだった。









end.....





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