[幸せと安心はとてもよく似ている](1/5)
遠くから、誰かが呼ぶ声がする。
闇の中、諒一はぼんやりと思った。
誰かに必死な声で呼ばれている。
起きなければと思う。
けれど瞼が重い。
「…ぅさん…りょぅさん……」
心地よい声。
このままこの声に包まれて眠りたい。
「…りょぅさん、起きて…りょぅさん……」
誰が呼んでいるのだろう。
こんなに切羽詰まった声は誰のものだろう。
彼女が帰ってきたのだろうか。
違う、これは男のものだ。
ぼんやり思考の海を漂ううちに諒一は意識がはっきりしてくるのがわかった。
重い瞼をほんの少し開く。
薄い視界はなかなか焦点を結ばない。
「…りょぅさん…?」
呼びかける顔が覗き込んでいる。
「………トーマ、か…?」
「りょぅさん、起きた……起きた…」
だんだんと意識がクリアになる。
目だけを動かして諒一はあたりを見渡した。
真っ白なカーテンが目に入った。
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