[けれど肝心なものは持っていない](1/3)
「なあ、トーマ。ご飯、なにか作ってよ」
「ご飯。なにがいい?」
「なにがいいかな…いや、その前に冷蔵庫、なにがあったっけ…」
ブツブツ言いながら立ち上がり、キッチンへ向かう。
TOM−A601220はおとなしくそのあとに続いた。
「うわ、見事になにもないな…」
苦笑する諒一の後ろから、TOM−A601220も冷蔵庫の中を覗き込んだ。
にんじんのしっぽ、キャベツの芯、小さなジャガイモ。
冷凍庫には食パンとご飯。
「りょぅさん。ジャガイモは冷蔵庫に入れてはいけない」
「………入れたの俺じゃないもん」
「誰が入れたの?」
「誰でもいいだろ。でもこれじゃなんも作れないなぁ…食べに行くかな」
「コンソメがあればリゾットができる」
「あ、そう? いける?」
「できる」
こくりと頷く。
「じゃあ頼む。コンソメなら戸棚にあるはずだし」
「わかった」
「あ、薄味めで頼む。塩分控えめな」
「塩分控えめ。わかった」
言うとTOM−A601220は冷蔵庫から材料を取り出した。
それからしばらくキッチン全体を見回していたが、つい、とまな板に向かった。
- 10 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?
[
←戻る]