洒落怖★師匠シリーズ
[■壷](1/5)




これは俺の体験の中でもっとも恐ろしかった話だ。



大学1年の秋頃、俺のオカルト道の師匠はスランプに陥っていた。


やる気がないというか、勘が冴えないというか。


俺が「心霊スポットでも連れて行ってくださいよ〜」と言っても上の空で、たまにポケットから1円玉を4枚ほど出したかとおもうと手の甲の上で振って「駄目。ケが悪い」とかぶつぶつ言っては寝転がる始末だった。


それがある時急に「手相を見せろ」と手を掴んできた。


「こりゃ悪い。悪すぎて僕にはわかんない。気になるよね?ね?」


勝手なことを言えるものだ。


「じゃ、行こう行こう」


無理やりだったが師匠のやる気が出るのは嬉しかった。


どこに行くとは言ってくれなかったが、俺は師匠に付いて電車に乗った。


ついたのは隣の県の中核都市の駅だった。


駅を出て、駅前のアーケード街をずんずん歩いて行った。


商店街の一画に『手相』という手書きの紙を台の上に乗せて座っているおじさんがいた


師匠は親しげに話しかけ「僕の親戚」だという。


宗芳と名乗った手相見師は「あれを見に来たな」というと不機嫌そうな顔をしていた。



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