[■鍵](1/2)
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僕のオカルト道の師匠は当時家賃9000円の酷いアパートに住んでいた。
鍵もドラム式で掛けたり掛けなかったりだったらしい。
ある朝目が覚めると見知らぬ男の人が枕元に座ってて「おはようございます」というので「おはようございます」と挨拶すると宗教の勧誘らしきことをはじめたから「さようなら」といってその人おいたまま家を出てきたという逸話がある。
防犯意識皆無の人で、僕がはじめて家に呼んでもらった時も当然鍵なんか掛けていなかった。
酒を飲んで2人とも泥酔して気絶するみたいにいつのまにか眠っていた。
僕が夜中に耳鳴りのようなものを感じて目を覚ますと、横に寝ていた師匠の顔を除き込むようにしている男の影が目に入った。
僕は泥棒だと思い、一瞬パニックになったが体が硬直して声をあげることもできなかった。
僕はとりあえず寝てる振ふりをしながら、薄目をあけてそっちを凝視していると男はふらふらした足取りで体を起こすと玄関のドアのほうへ行きはじめた。
『いっちまえ。何も盗るもんないだろ、この部屋』
と必死で念じていると男はドアを開けた。
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