世界が愛に染まる時
6章…[欲と想いの方程式](1/30)





「問5から下まで全部やれ」



命令形なのはいいんだけど、その威圧感にビックリする。


それは、先生が暴走族のヘッドであることを私が知ってるからなんだろうけど…


私はシャーペンを持って下を向いた。



「せんせっ!ここ分かんないです」



…早すぎじゃない?


ちょっとは考えなさいよ。


なんて


みっともないこと考えてしまうのが嫌だな。


そんなの安っぽい嫉妬だ。


やめとこう。


私はノートに落としていた目線をこっそり先生に移した。


先生はさっき“分からない”と言った子に、淡々と説明していた。


先生の横顔は絵に書いたようにというか、彫刻のようというか…


とにかく端正だ。


信じられない。


あの人と


キスして


抱き締め合っただなんて…


あの後


先生は私の後頭部に置いた手の力を緩め、頭をポンポンと叩いて「帰るぞ」と言った。


家に帰り着くまでの間、私も先生も何も喋らなかった。


私は隣を歩く先生を何度か盗み見て、一人で勝手に落ち着かない気持ちになって…


「じゃあな」と言われて離れる時には、少しだけ名残惜しい気持ちにもなった。


でも期待してる訳じゃない。


先生も私と同じ気持ちでいてくれるかもとか


そんなことは思わない。



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