世界が愛に染まる時
5章…[シナリオ通りの恋](1/22)
奈々が出て行ってから15分も経ったけど、私はずっと落ち着かなかった。
考えれば考える程おかしいと思った。
奈々のお母さんが「早く帰ってきなさい」だなんて言うはずがないんだ。
おばちゃんは奈々達に似て心配性なところはあるけど、奈々が私と一緒にいる時にそんな心配を働かせることはないからだ。
「坂口が気になるか」
さっきと同じ所に座っていた先生が立ち上がり、私の隣に腰掛けた。
「…いえ」
「嘘が下手だな」
「……」
「反撃も出来ない程心配なら行ってこい」
「…いいんですか?」
「その代わり今度埋め合わせしてもらう」
私は頷き、バッグを取って立ち上がった。
先生に頭を下げて、駆け足で廃墟を後にする。
走るようなことではないのかもしれないけど…
でも心配なの
気になるの。
奈々…
彼と会ってるの?
奈々は優しいから、彼と別れたのを私のせいだとは思ってないだろう。
でも奈々の中ではモヤモヤしたものが残ってるのかもしれない。
彼のことを完全に吹っ切ることが出来ないまま…中途半端な気持ちのままかもしれない。
それでもやっぱり嫌なの。
自分のエゴだろうと何だろうと
奈々が傷付くかもしれないって思っただけで、相手を殴りたくなるくらいだ。
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