世界が愛に染まる時
10章…[有言実行](1/42)
先生と個人的に会えなくなってから2週間。
予想以上に辛かったのは、先生と2人きりになれないことだけではなかった。
テツやカミさんに会えないのも、私には結構辛いことだった。
今までだって会って何を話すという訳でもなかった。
それなのに会えなくなっただけで、私の中の元気の素というか、そういうものが減っていくような気さえした。
奈々もカミさんと会えないことに、もうグッタリさえしていた。
テツを突き飛ばした女の人はきっと先生絡みだけど、用心するに越したことはないと、奈々もカミさんから離れることになったのだ。
皆で廃墟に集まってワイワイと下らないことをやるあの空気。
あの空気が自分の中から抜けていくのが日に日に分かる程だった。
でもそんな中で、テツが時々くれる電話が嬉しかった。
『もしもし』
『テツ?どうしたの』
『お前の元気がねぇから掛けてやってくれってハルさんが』
『……』
『愛されてんな』
『ぶっ叩くわよ』
『はいはいごめんなさい』
『……皆元気にしてる?』
『ああ』
『何か分かったの?女のこと』
『お前は余計な心配すんな。大丈夫だよ。皆元気にやってっから』
『……ん』
こんな具合だった。
相変わらず太くて恐い声だったけど、その低い声にすごく安心した。
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