性格悪い系彼氏
天然の性格悪さ (1/7)
◆◆◆
いつも生田さんと帰る約束をしてる火曜日、電車に乗り込むといつも通り生田さんが座席に座ってて。
その姿を見ただけで泣きそうになった。
「……お前、何死にそうな面してんだよ」
怪訝な顔をしてそう言った生田さん。
あー、もう、そのいつも通りの機嫌悪そうな声聴くだけでも、鼻の奥がつんとする。どういうこと。
雨宮さんの、ほんの少しも、微塵たりとも自白してくれなさそうな態度を見た一昨日から、ほとんど寝れていない。
何か証拠はないかとずっと考えてみても、雨宮さんはただのバカじゃないのが本当に厄介だなと思った。
ちょっとふらつきそうになるのを我慢しながら、生田さんの隣に座った。
「……い、生田さん」
「ん?」
生田さんに相談して、どうにかなるかは分からないけど。
私の話を信じてもらえるのかどうかも不安だけど。
でも佐藤さんが今日、絶対に生田さんに相談しろと言ってきて。彼氏なら黙ってた方が怒るんじゃないかって。
佐藤さんに言われなくても、生田さんに泣きつきたい気持ちはずっとあったけど。
言おう、相談しよう、とちょっと深呼吸して、近くにあった生田さんの手を少し握った。
そしたら、予想外にも生田さんが優しくぎゅっと握り返してきて、目の前が霞んできた。
生田さんにも相当、酷いことはされた。
それでも耐えられたのは、生田さんは本質は尊敬できるほどしっかりした人なのを分かっていたし。
何より酷いことする時の生田さん自身が、私を本気でどうでもいいと思っていなかったからなのだろう。
でも雨宮さんは、散々本質からおかしい部分を見てきたからこそ、不安で不安で耐えられない。
雨宮さんは本気で、私が盗んだ犯人にされようともどうでもいいと思っているのだ。
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