さようなら、愛する人よ

 †    愛する人よ、さようなら  ( 1 / 1 ) 



 
私は幸せだった。


ただそれだけだった。




信じてたのに。

二人のこと、
ずっとずっと…



ある日彼からの着信音が鳴った。


ただ普通の人生だった―――



―――…この電話に出るまでは。





『はい!』

私は元気よく電話に出た。


『…あ、栞ちゃん?』

――え?進平のお母さん?

『…進平、進平が…』







――――――………ハァッハァ…

『進平…?』



病院のベットに横たわり
真っ白な顔した進平の姿。






どうしてこんなことに…



隣の病室には
進平と同じ顔をした璃久の姿。








…なんで?












『…この二人
昨日塾の帰り
一緒に帰ってたんだって。』




私の隣にいた進平の親友
久保君が口を開いた。





―――そう、
進平は私の彼氏で
璃久は私の親友。


この二人は塾が一緒だった。



その塾の帰りに
二人で歩いていたところを
何者かに刺されたらしい。
















『あの二人、
つき合ってたんだって!』





『浮気じゃん。』





『栞…可哀相。
大切な人二人も一気に亡くして
その上二人にだまされてたなんて…』




進平と璃久のお葬式が終わっても

犯人は見つからず


二人と私の噂も絶えなかった。

















―――――――あれから15年。




私はあの頃のクラスの
同窓会に来ていた。




大人になった私たちは
昔の思い出話を絶え間なく語った。






当然、
あの事件の話も持ち上がった。











『でもさーあの頃は言えなかったけど
あの二人…
殺されて当然だったと思わない?』












あの頃璃久の次くらいに
親しかった友達が
いきなりそう、大声で言った。






あとに続く周りの人の声。












『確かに!
私も璃久のこと…
あんま好きじゃなかったし!』




『ほんと進平も進平だったよなー
栞のことだましてさー!』






(…みんな、覚えてたんだ。)


『ねっ栞〜!』





(みんなひどいなぁ…)





『まぁ…そんなこともあったね〜』





(いくら昔のことでも
こんなとこで話しちゃダメでしょ…)






『でもあの事件、
結局犯人捕まらずだったよね〜』






『そういえば…!』





『うわ!こっわ!
絶対バチだよ!』








(こらこら…そんなこと言ったら
呪われちゃうよ。)









『15年前なら…
もう時効過ぎてるよねー』












(…いや、
呪われるのは―――――)


























『あの二人殺したの私なんだよね。




















あの二人がつき合ってたのも





知ってたし。』



























呪われるのは私の方。





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