【さつきとじん】
[第3話『無邪気な語り部』](1/10)


偽物の予言者と呼ばれる彼女。

だが、彼女が予言を口にした時、その雰囲気は確かに予言者たる神々しさを纏っていた。
今まで見た彼女とは全く違う一面を僕は見た気がした。

「そんな顔で見るな。
気恥ずかしいだろう」

久遠寺は照れたように頬を掻いてそっぽを向く。
その顔は赤く染まっていた。

「ちょっとビックリしたよ。
でも、今のってさ…」
「む、悪いな。
急用が出来たから先に行く」

久遠寺はそう言うと足早にすたすたと去っていく。
僕はしばし呆気にとられて、それから追いかけようと我に返った所で

「せーんぱい!」

と声をかけられた。
振り向けばとことことショートボブの眼鏡をかけた何処か久遠寺に似た少女が走ってくる。

「ああ、浅倉さんか」
「おはようございます、名波先輩。
今日はお一人ですか?」

僕は「久遠寺が…」と言いながら前を向いて、その姿が何処にも無いことに気がついて口を閉じた。

あいつ、逃げやがった。

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