【さつきとじん】
[第1話『前夜』](1/2)


明日は僕の18歳の誕生日。

僕は習わし通り日付を跨ぐ前にベッドに入って瞼を閉じた。
でも、だからといって眠れる訳もなく、ドクドクと鳴り響く心臓の鼓動に耳を澄ませている。

明日は運命の日といっていいだろう。
僕だけでなく、きっと誰もが希望に、夢に、明るい未来に胸を弾ませたはずだ。

父さんも、母さんもそうだったろう。
隣に住む幼なじみの綾瀬もきっとそうだと思う。

今頃彼女もまた僕と同じようにベッドの中で眠れぬ夜を抱いているに違いない。
彼女の誕生日も明日なのだ。

誕生日。
僕らが生まれた日。
そして、18歳の誕生日は僕らがもう一度生まれてくる日、生まれ変わる日になる。

才能の開花。
それが18歳の誕生日に起きる。

ある人は18歳に学問に目覚め、ある人はスポーツの才能に目覚める。
学問やスポーツ以外にも工作や芸術の分野に目覚める人もいるだろう。

彼らの多くがその才能を生かす道に進み、将来を輝かせる。
第2の人生の始まりの日だ。

僕は一体どんな才能を持っているんだろう。
普段どんくさい僕が急にスポーツの才能に目覚めるとも思えないし、芸術も似たり寄ったりだ。

自分の将来が明日急に決まる。
それは不安でもあるのだ。

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―栞
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