そして、魔王は勇者にベタ惚れで。
◆[プロローグ](1/2)

とある一軒家にて、閉めきられた部屋の扉の前で佇む蒼い髪の少年が一人。
扉にはご丁寧に『開けるな』と書かれているプレートが掛けられている。

部屋の中で何かをしているのは一目瞭然だ。

「何をしてるんだ、ティラは?」

少年は溜め息混じりに呟く。

この部屋に居る人物は、良い奴ではあるが、キレると町一つ滅ぼしかねない力を持っている。

この蒼髪、蒼眼の少年――イアン=タークスは中に居る人物の恐ろしさは身を持って知っている。

だから、敢えて中に踏み込まず、ゆっくりとこの扉が開かれるのを待てば良い。

そう、ゆっくりと――。

そう思っていた矢先、突然、勢いよく、扉が開かれた。
開かれた音は最早、風を切る音しか聞こえなく、扉はイアンの鼻先を掠っていった。

「……っ!!」

背中に冷たい汗が伝う。

「出来たぞ、イアン!さぁ、中に入るのだ!!」

扉の向こうには、背はイアンより頭一つ分小さいが、かなり顔立ちが良い少女が満面の笑みで立っていた。


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