曙を探して
10[ある日の出来事](1/1)
彼は怒っている。
少なくとも、感情的になって、
怒りに満ちた文面を、返信メールで、叩きつけてきた。
その文面からは、普段の彼にそぐわない激しさと、
もうすぐ30代になろうとする年齢に、奇妙にかけ離れた、
駄々っ子の幼さが同居している。
こんな些細なことで、そこまで?
そう思いつつ、詫びを返しても、
憤怒の彼は、沈黙で答える。
彼と関わる多くの人は、
彼を「気難しい」と評し、
そんな彼の沈黙を「性分」として遠ざける。
そう評されても、なお、
彼は自分の信じるルールを、
頑なに守ろうとする態度は、
変えないのだ。
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