曙を探して
8[就労](1/7)
その日彼は、
ジョブコーチと一緒に、
募集先の大手企業へと、見学に行ったそうだ。
職業訓練支援を受けていた彼を、
たまたま、センターに見学に来た、会社の人が気に入ってくれて、
「一度、会社を、見学においで。」と、
声をかけたのだ。
そこは、名前を聞けば、すぐにピンとくるような、
大企業。
障害者就労のための体制も、
障害者雇用の実績もある。
障害者で無かった彼が、
かつて、
望むべくもなかった、会社。
ジョブコーチの運転する車で、一時間ほどかかった。
見学の後で、ジョブコーチから私に電話が入った。
そこで説明された、仕事内容と条件は、
私が彼に、と、望んだままのような、
そんな、仕事だった。
ジョブコーチも、「彼なら出来ると思います。」といい、障害特性を考えると、非常に適した作業内容だと思う、と。
彼に会って、面接をしてくれた、人事担当者や、実際の就労現場の人達が、
彼のキャラクターを、気に入ってくれて、
「会社はウェルカムなんです。」とも。
仕事を失った健常者が、住む家もなく、街に溢れている時に、
残業もなく、
彼が希望する、アフター5の時間が確保できて、
社会保険も完備。
給与面でも、生活するに足る額が約束されている。
業務の必要から、定期的に健康診断を受けることが義務付けられていて、
費用は会社が全額負担。
通勤のための交通費も。
それを、「お断りしたい。」と言い出したから、
ジョブコーチは驚いて、
電話を入れてきたのだ。
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