曙を探して
8[就労](1/7)
その日彼は、
ジョブコーチと一緒に、
募集先の大手企業へと、見学に行ったそうだ。

職業訓練支援を受けていた彼を、
たまたま、センターに見学に来た、会社の人が気に入ってくれて、


「一度、会社を、見学においで。」と、


声をかけたのだ。

そこは、名前を聞けば、すぐにピンとくるような、

大企業。

障害者就労のための体制も、
障害者雇用の実績もある。

障害者で無かった彼が、
かつて、
望むべくもなかった、会社。


ジョブコーチの運転する車で、一時間ほどかかった。


見学の後で、ジョブコーチから私に電話が入った。

そこで説明された、仕事内容と条件は、

私が彼に、と、望んだままのような、

そんな、仕事だった。

ジョブコーチも、「彼なら出来ると思います。」といい、障害特性を考えると、非常に適した作業内容だと思う、と。

彼に会って、面接をしてくれた、人事担当者や、実際の就労現場の人達が、

彼のキャラクターを、気に入ってくれて、

「会社はウェルカムなんです。」とも。


仕事を失った健常者が、住む家もなく、街に溢れている時に、


残業もなく、
彼が希望する、アフター5の時間が確保できて、
社会保険も完備。

給与面でも、生活するに足る額が約束されている。

業務の必要から、定期的に健康診断を受けることが義務付けられていて、
費用は会社が全額負担。

通勤のための交通費も。

それを、「お断りしたい。」と言い出したから、

ジョブコーチは驚いて、

電話を入れてきたのだ。

- 47 -

前n[*][#]次n
/57 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]