曙を探して
4[揺れる](1/5)
「アタリみたい。」彼女が首をすくめた。
「おめでとう!予定日はいつ?」
でも、彼女は、

「迷ってるの。」

そう答えた。


手にしたティーカップを、
ゆっくりと、静かに回す。
口に運ぶでもなく、
さざ波を眺めて黙った。


まだ、病院には行ってない、
検査薬を使って調べたから。
苦笑して、付け足し、
また、無言。


三人目になるはずの、その子を、
歓迎出来ないほど、貧しくはなく、
出産を悩むほど、
高齢の夫婦でもないのに。


まだ、話してないの?と尋ねる私に、
彼女は俯いたまま、頷いた。
夫はもちろんのこと、
両親にも、まだ。

病院に行くのも、不安で、
検査薬を買って、
結果を抱えておけなくて、
電話をしてきたのだ。

呼び出された、ファーストフード店で、飲み物だけを頼んで、
そのことを告げるまで、
何日かかったのだろう?

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