曙を探して
2[記憶](1/6)
どうしてなんだろう?

友達は、みんな誰でもが、
嫌なことは、忘れていけるのに。

どうしてなんだろう?

僕は、いつまでも、いつまでも、
嫌な記憶から、離れられないでいる。

忘れたつもりでも、
思い出してしまう。

忘れていたいのに、
その方が、幸せだと思うのに。

少年は目を背けるように、
呟く口調で訴える。

そうだね、と、私は言葉に詰まって、
窓の外を眺める。

鉛の色をした空は、
あの時の色に似て憂鬱な曇り空。

私は、彼の、言葉にならない思いを拾い上げようと、

密かに彼を盗み見る。

視線が合うことを、怖がる彼が、
怯えないで済むように。


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