過去と未来 (1/1)
目が覚めた。ここはどこだろう?今は何月?何日?何時?というより自分は誰だろう?
わからない。なんだか眠くなってきた。誰かのすすり泣くような声が聞こえたような気がしたけどもう寝よう。
目が覚めた。どうやら自分は男らしく、ここは病院のようで、ベッドに横たわっていた。シワだらけの手にシミ、痩せ細った体。自分はおじいさんらしい。でも眠くなってきた。もう寝よう。
目が覚めた。どうやらここは病院らしい。けど横たわっているのは知らないおばあさんだった。でも眠くなってきた。もう寝よう。
目が覚めた。どうやらここは自宅らしく、僕の隣にはあのおばあさんがいて、僕をしたう中年の男女と小さな子どもがいた。どうやら僕の子供と孫らしい。幸せな気分で僕は眠りに落ちた。
目が覚めた。今日僕は気付いたことがある。時間が逆回りしている。僕は長い間おばあさんと2人暮らしをしていたようだ。
目が覚めた。もう何度目だろうか?孫が生まれ、子供は自立し、巣立ち、幸せな家庭を作って、結婚して、それなりに恋愛をして時間は逆さまでも普通に過ごしていることに幸せを感じていた。もっと時間が戻り、過去を知り、幸せを感じていたかった。
目が覚めた。僕はふと気付いた。僕が0歳つまり生まれる前には何が待っているのだろうか?
僕は怖くなった。過去へと戻ることが怖くなった。もっと未来を感じていたい。時間は逆さでも、僕にとっては過去が未来であり、未来は過去なのだから。
あのすすり泣きが聞こえた時点でカウントダウンはすでに始まっていたのだ。
幸せを感じることが怖い。だってそれは先の見えない恐怖へと進んでいるという証だから。
次に目が覚めたとき僕はどうなっているのだろうか?
目が覚めた。僕は怖くて怖くて、これでもかってくらいおもいっきり泣き叫んだ。
おめでとうございます。元気な男の子ですよ!
さぁ、人生のはじまりだ。
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