雨音が窓をつたう
[●本編●](1/18)
雨音に世界のすべてが流されるような一日の始まり。
眠りにゆだねて揺れている、もう朝が届いている一日の始まり。

重くベッドに沈み、眠ったまま動きのないこの身体。
遠くから、雨音の中に入るノイズ、車のエンジン音が静かに止まった。
そして階段を上がりたんたんと近づく足音。
この小さなマンションの扉の鍵を“カチャリ”と、ゆっくり開けていく音。

−−−ああ、来たんだね?

重い身体と薄く覚めた意識の中で、その音が誰の訪れかを感知し、小さく、期待に心が躍った。
そしてこのまま、じっと息をひそめて、俺は眠り続ける。
眠っているポーズを、飽きもせずさらけ出す。
ぺたりぺたり、足音が近づき小さな雑音が混じっていく。
コンビニのビニール袋の擦れる音、大きめの服を脱いで、ソファに掛ける仕草の、布のすべらかな音。
ぺたりぺたり、静かに近づいて来る気配…。この甘ったるい気配に、息が苦しそうな、そんな恍惚の予感。

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