探偵日誌(仮)
[1 キッカケ](1/4)
その日は、数年ぶりの台風直撃により、僕の町は少しだけざわついていた。
ざわつくと言っても、言うほど大したものではなく、心配性な大人たちが勝手に騒いでるだけのものだ。
そしてその日、僕が通う中学校にもある騒ぎが起こっていた。
昼休み、教室の真ん中で群がる群衆がその事態の重大差を物語っていた。
教室を通りかかった僕は、その異常な光景に目が止まる。
好奇心、興味、それらの感情に苦悩した後、僕は衝動に身を委ね、野次馬の中へ入り込む。
しかし、立ちはだかる人の壁は、思いのほか厚く、それでも僕はその場に溶け込もうと奮闘する。
人と人との隙間から微かに見えた奥の風景。
少女は泣いていた。
蓮潟南(ハスガタミナミ)。
それが、少女の名前だ。
蓮潟南は、僕の古くからの友人である。
しかし、ここ最近は遊ぶ機会もなく、クラスが違うことで、より一層、関わりがなくなってしまった。
その最もの原因は、もう一人の友人、岬宗一(ミサキソウイチ)にある。
岬宗一と蓮潟南、そして僕とは、世間一般的に幼馴染とも言える深い絆で結ばれていた。
僕たちは何をするにも常に一緒だった。
しかし、中学に入学した瞬間、彼と彼女は恋仲と呼ぶべき存在となってしまった。
僕だけが蚊帳の外。
不思議な疎外感から、気がつくと僕は、、、
二人から距離を置いていた。
可と言って、僕から彼らとの友情が消えたかというと、また違う話で、彼女が泣く理由を知りたい僕は、前に立つ生徒に一つ聞いてみた。
彼は、僕にも分かりやすいように尚且つ、簡潔に話してくれた。
「体育の時間に蓮潟さんの下着が盗まれたみたいなんだ」
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