傷つきたがりピエロ
[ピエロ達のepilogue](1/10)







師走も押し迫ったある日曜日。今日は午後からアキの部屋に来ていた。


私の受験や彼の文化祭準備なんかが重なって、ここの所あまり会えていなかったから久しぶりの2人の時間だ。


こうして自宅に呼ばれるのはもう何度目か。改めてオーナーと奥さんにも彼女として紹介してもらった時は、さすがに緊張した。バイト先で元々お2人と面識があったとはいえ、プライベートとなるとまた別物だ。優しく迎え入れてもらえた時は、すごくほっとした。


「親父は夜までカフェで、母親も出掛けてて帰りは遅くなるから」


アキは例の物を準備しながら、私の機嫌を伺うように言った。


「だから今日、いい?」


心臓がドキッと鳴る。ここへ来るたび、毎回覚悟はして来てる。でもお母さんが居たり私が生理だったりで、なかなかタイミングが合わなかった。


「はい、大丈夫です」


私がベッドに上がると、アキはふうとため息をついた。


誘う方が緊張するんだな。デカい図体が何だか可愛く思えて、私の気持ちは緩んだ。


アキが出してきたのは、大きめの白いキャンバスだった。イーゼルに置いて丁寧に位置を調整する。


中断したままだったヌードモデルをする約束が、やっと果たされる日が来たのだ。


アキが用意をしてる間に、背中を向けてセーターを脱いだ。1年前は初めてだったから恥ずかしくて外に出てもらったりしたけど、今回は2度目だ。面倒くさい事言って煩わしいと思われたくない。


内心胸がバクバクで慣れた女を演出しながら、ブラとパンツだけになった。一応、上下バラバラにならないようにして来て良かった。


部屋寒くねえ?」


アキが後ろから気を使った声を掛けてくる。


「平気です、エアコン効いてるし。今年は暖冬らしいですね」


世間話なんかしてみながら、実際はど緊張で身体がカッカしてる始末。



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