傷つきたがりピエロ
[黒歴史](1/31)
黒歴史
「タクシー待たせてあるんだ、うちに帰ろう」
カフェを出るとお兄ちゃんは駐車場に向かった。途中、駐輪場の横を通り過ぎる。
「待ってお兄ちゃん、私自転車で来たの」
「分かってる。でも今夜は置いていきな。お前も早く帰りたいだろ」
自転車がないと何かと不便だ。でも…薄暗い駐輪場を見回して、さっき男が潜んでいたのを思い出して怖くなった。
私はお兄ちゃんに従ってタクシーに乗り込んだ。
「花見3丁目24番地までお願いします」
うちの住所を告げるとタクシーは走り出した。社員寮の近くから来たはずなのに、メーターは3000円近くなっている。タクシーを待たせると走るのと同じようにお金が掛かると聞いたことがあった。
お兄ちゃんには本当に迷惑をかけてしまった。
「ごめんね、明日も仕事なのにこんな時間まで」
「平気。今夜は実家に泊まるよ」
「でもこんな急に、お母さん達が変に思わない?」
「今夜は玲奈とご飯行ってたって、さっき連絡しといたんだ。バイト終わってだいぶ経つから母さん心配するだろ」
さすがお兄ちゃんだ。私は全然そこまで頭が回らなかった。
お兄ちゃんのひざには手付かずのコンビニの袋がある。私とご飯どころか、お弁当すらも食べてないんだ。
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