傷つきたがりピエロ
[牙](1/29)





夏休み本番。


友達は海だのプールだの花火大会だのとSNSを賑わせている中、私は夏をバイトで埋め尽くそうとしている。


オーナーの病気や清香さんの妊娠騒動も重なって、カフェは大変な人手不足だ。私の夏は全てカフェに捧げよう。


なんて自己犠牲っぽく言ってるけど、実は全然嫌じゃなかった。


カフェに行けばアキに会える。堂々と、理由とか付けなくてもアキに会える。


男の人に会いたいからバイトする子なんて、なんて頭が軽いんだろうって今までバカにしてた。なのにまさか、自分がその穴にハマってしまうとは。


でもしょうがない。今のところ、アキと私の確実な繋がりはあのカフェしかないんだから。


こないだ絵のモデルをしてから、1週間ぶりに今日はシフトが重なっていた。清香さんはお休みを取っているのか2号店に行ってるのかは分からないけど、あれからこっちの店のシフトには入ってない。


彼女のこと、本当はすごーく気になっているものの第三者の私が首を突っ込むのは違う。向こうから話してくるまでそれには触れないつもりでいた。


夕方なのに燦々と明るい町を自転車で飛ばし、勤務15分前にカフェに着いた。どうせ制服に着替えちゃうのにお気に入りの服を着たりして。新太くん以外の人のために服を選ぶなんて初めてかもしれない。


店のドアをくぐると、アキはキッチンの中で働いていた。


「お疲れ様です」


内心ドキドキしながら挨拶すると、


「お疲れ様です」


いつもと変わらない返事が返ってきた。表情も口調も他の人に対するのと全くおんなじ。



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