傷つきたがりピエロ
[終わる春、始まる夏](1/68)

終わる春、始まる夏



新太くんが家を出て行く日は、皮肉な程晴れていいお天気だった。


日曜日のお昼前、背中にリュックサックを背負った彼は大型バイクにまたがった。


見送りは私とおばさんだけ。おじさんは部屋から出てこようとしなかった。最後まで息子と深く話し合うことが出来ないまま、この日を迎えてしまったようだ。


「新太くん、約束の物」


こちらから言わないと出しそうにないので催促する。彼は渋々、といった態度でメモ用紙をおばさんに差し出した。


引っ越し先の住所と、ルームシェア相手のマネージャーの携帯番号だ。これを聞き出すのに苦労した。


「玲奈がどうしてもっていうから教えたけど、電話とかするなよな。マネージャーに迷惑だから」


「新太くんがちゃんと連絡取れれば、マネージャーに電話なんてしないよ。ね、おばさん」


「そうよ。あなた、すぐ無視するから」


「2人とも大げさなんだよ。ここからバイクでほんの20分の距離だぞ」


簡単に言ってくれる。玄関から玄関まで30秒で行き来してたのがバイクで20分になるんだ。今までみたいに「ちょっと行くよ」はもう出来ない。わざわざ約束して待ち合わせたりしないと。会える回数は格段に減るだろう。


「荷物それだけ?」


たった1つのリュックサックに、まだ度々戻って取りに来るのかなと期待をかけたけど、それはざっくり切り捨てられた。


「前もって宅急便で送ってあるから。あ、あと引越しの手伝いとかも要らないからね。マネージャーとのルールで、2人の家に女とペットは連れ込まないって決めたんだ。色々面倒だからさ」


それって両方新太くんに都合のいいルールじゃないか。潔癖だから動物全般嫌いだし、女も苦手だし。



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