浮気ダメ絶対
[act3](1/1)




 身体が怠くて動けない。シャワーを浴びに行きたいのにそれすらも叶わないくらいに怠い。身体中が軋むように痛い。手首や太腿には案の定、学秀の手形の痣がついている。
 後始末もせずに行ってしまうのはいつもの事。翌朝、動けない俺を見ても何も感じないようだ。当たり前か、性処理道具に悪いことをした、とか思うはずがない。
 ピンポーン、とインターホンがなった。無視するわけにもいかず、のろのろとベッドから這い出る。とりあえず、近くに置いてあった替えのシーツを身体に巻き付けて玄関へと向かう。

 「……どちらさまで……っ!?」

 がちゃり、と玄関のドアを開けると殺せんせーが立っていた。

 「かかかかかかカルマくん!なんて格好をしているんですか!?服を着なさい!」

 顔をピンクに染めてあたふたしている。気にしすぎだろ。男の身体なんて別に見られた所でだ。

 「何の用。俺休むって連絡したはずだけど」

 昨晩喘ぎすぎたせいで声が枯れている。ごほっと咳をすれば風邪を引いているようにもみえる。

 「渚くんから、カルマくんを助けてあげてほしい、と言われました」

 「………は?」

 「カルマくん、浅野くんに酷いことをされているそうですね。その声もそのせいですか?」

 渚くんには、学秀との関係を言ったことがあった。その時、俺は助けて欲しい、なんてことは一切言わなかったはずだ。なのに、なぜ……

 「カルマくん。とりあえず中に入れてもらえますか?」

 確かに殺せんせーを誰かに見られるとまずい。俺はドアを開けて、殺せんせーを中に入れた。立ってるのもしんどくて、ソファがあるリビングに行って、ふかふかのソファに腰掛けた。

 「カルマくん。少し話しましょうか」

 「……俺が浅野くんと何をしようと俺の勝手でしょ?せんせーには関係ない」

 膝を抱き抱えるようにして身体を小さくさせる。弱く見えてしまっただろうか。失敗した。

 「……君がそれに納得しているのならば、せんせーは何も言いません。ですが、君はこのままでいいんですか?」

 いい。構わない。学秀と少しでも一緒にいられるのなら酷くされても耐えられる。愛されてなくても構わない。………そんなこと、思ってない。
 本当は愛してほしい。俺の名前をもっと呼んでほしい。他の女の子に触って欲しくない。優しく抱いて欲しい。
 でも、そんなこと言ったらもう一緒にいられなくなる。捨てられてしまう。……どうしたらいいのかわからない。

 「じゃあどうしろって言うんだよ!あいつは俺のこと好きじゃないんだ!だけど、だけど離れたくない!」

 子供みたいに喚き散らしてるうちに涙が出てきて、情けなかった。駄々をこねている子供みたいだ。情けない。

 「……カルマくん。きっと君たちは何か誤解しあっていますよ」

 「ごか、い?」

 「ええ……一度浅野くんと話してみてはどうですか?」

 誤解?何を誤解しているっていうんだ?俺は意味がわからないまま、とりあえず頷いた。




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