100年先も愛して...

第五章[もう一度](1/12)



ぽたぽたと木でできた床に雨の滴が落ちて



白い足の重さに木が軋んだ


「ふぅ…報告しなきゃな…」



沖田は屯所に帰ってきていた   



雨に濡れて身体は氷のように冷たくなっていた




とりあえず


向かう場所は一つ



「沖田組長!」


沖田が振り向くと
山崎が真顔で立っていた



髪についた滴が山崎に飛ぶ


山崎は気にしていないようだった



「どうしたんです?」



沖田は驚いたように声をあげた



「局長がお呼びです」



山崎に表情はなく


まるで人形のようだった



沖田は若干の違和感を感じながらも目を伏せる



「わかりました


今から向かいます」



さすが近藤局長…


もう耳に届きましたか…




沖田が局長室に向かおうと歩みを進めると



山崎が静かに声をかける 


「お待ちを…」



「なんです?」 



沖田がまた振り返る



「土方副長が探しておられます


鼠…を…」



山崎の目が怪しく光っていた




鼠…



「そうですか…


何も言ってはいませんね?」



沖田が優しく微笑む


しかしその笑顔からは


「はい」


怒りのようなものを覗かせていた


「さすが密偵…」



そう呟いた直後、沖田は山崎の胸ぐらを掴んでいた

 

こんなことになっても山崎からはなんの感情も読み取れない



それが沖田の気に障った



「…あの人のことを鼠と呼ぶのは…


もうやめろ」


鋭い目付きと低い声で山崎に言い放つ


「承知」



山崎はサッと沖田の手を振り払い跪いた



沖田は山崎をもう一度睨むとくるりと背を向けて



ゆっくりとした足取りで局長室に向かった 






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