かけてはいけない電話番号


先輩(1/12)








夏休みに入った。中学三年生の夏は部活もすでに引退し、受験に向けての勉強、勉強、勉強 の毎日だ。

毎日冷房のきいた部屋で過ごしているせいか、一歩外に出るとすぐに汗だくだ。

「うわっすごい汗!外、暑いの」

「当たり前だろ。夏だ、夏。今日なんか猛暑だよ」

昼になると決まって山田の家に行った。山田はクラスメイトからのいじめにより、二年生に進級してから一度も学校には行っていない。

でも俺はそれで良いと思っている。無理して学校へ行って、傷つくのはもう見たくないから。

「スイカ食べたいって、メール見てくれた?」

サンダルを脱いで家に上がると山田は俺の手元を見ながら聞いた。その手には勉強道具の入った鞄と、コンビニのビニール袋。

「アホか。バイトもできない中学生を舐めんなよ。次の小遣い日は八月入ってからなんだよ」

俺は山田にコンビニの袋を渡した。

「スイカバー…」

中を覗いた山田はボソッと呟き、くるっと背を向けて歩き出した。相変わらず喜びを隠すのが下手すぎる。口角がキュッと上がるのが見えた。



「はい、お茶」

「サンキュ」

山田は俺に氷が沢山入った麦茶を出すとアイスの袋を開けて食べ始めた。

「自分のは買ってこなかったんだ?」

「ん?ああ…」

俺は麦茶を持ち上げた。カランと音が鳴って、グラスから水滴が落ちた。隣では山田がシャリシャリと音を鳴らしながらアイスを食べている。

山田は夏だと言うのに、長袖、長ズボンを着て、肌を隠している。

「何?」

そんなに見ているつもりは無かったが、無意識に山田の事を見ていたようだ。不思議そうな顔をして俺を見る山田に「別に」と一言言って、冷たい麦茶を飲んだ。



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