一歩ずつ (1/28)
あの騒動から2日が経った
今日は総会以来の合奏である
「お疲れさまです!」
「桃子……!?」
第一集会室に行くと、トランペット1年生の堀 桃子が先に練習に来ていた
彼女があたしより先に練習に来ることはほとんどない
むしろ、バイトで合奏にも個人練習にも来ない日の方が多いのである
なので、彼女の姿を見て驚いた
「珍しいね、こんなに早く」
「はい。この前の優太さんの話を聞いてたら恥ずかしくなったんです。人がいっぱいいるから、私一人くらい練習しなくてもバレないからいいだろうって甘えてました。すみません…。なので、これからはきちんと練習しようって思いまして」
「え…」
「ずっとバイトを言い訳にしてましたが、考えてみれば冴羅さんだって両立しながら頑張ってるんですよね。他の先輩方や久美たちだって…。結局はバイトを理由にサボってただけでした」
彼女は困ったように笑ってあたしを見た
「だから、私も頑張ります。ただ、バイト先は人が少ないので時々シフトと合奏がかぶるかもしれません。それは一応伝えておきますね」
「分かった。休む時は連絡してね」
「はい」
再び桃子はロングトーンを始めた
優太の言葉はしっかり届いていたのである