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なんだかんだあったが、なんとかまた平凡な毎日を送っている。
でもあの時は、不覚にも少し感動した。
みんな不器用ながらも、私の事を受け入れてくれてるんだなぁって……
「おい、邪魔」
前言撤回。
「なっ……」
しみじみと廊下を掃除していた私に、生意気発言の健。
こんなに広いのに、どこが邪魔なんだか。
「あれ?どっか行くの?」
「いや、黒川さんがリビング集まれって」
「またか……」
今度は何だと思いながらも、仕事を中断し急いで向かう。
リビングに着くと、既に他の3人は現れていた。
今回は寝起きじゃないから、不機嫌では無さそうだ。
「何ですかね。また学級委員だったりして」
「俺もうやらねぇからな」
智とそんな冗談を言っていると、ドアが開いた。
「どうぞ、お入り下さい」
黒川の声がして、みんなが振り返る。
黒川の隣には、茶色の巻き髪に真っ白な肌。くりくりの目。
ふわふわとした雰囲気の、可愛らしい女の子が居た。
「皆様、ご紹介します。今日から立花様とメイドの仕事をしてもらう、中嶋珠稀(ナカジマタマキ)さんです」
とにかく可愛い……人形みたい。
女の私でも、そう思う程だ。
私なんかより全然メイド服も似合いそうだし。
思わず見とれていると、ついに女の子は口を開いた。
「初めましてぇ、珠稀ちゃんでぇす。よろしくにゃんっ!」
……へ?!
その甘ったるい声に、耳を疑う。
珠稀ちゃん?にゃん?
一瞬耳がおかしくなったかと思ったよ。
これは....あのお騒がせ女、坂之宮薫を超える危険人物だ。