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ゆらゆら、ゆらゆら。
「……おい」
ん?ゆらゆら?
身体が揺れてる?
それに、さっきから誰かに名前を呼ばれているような気がする。
「……まだ起きねーのかよ」
「……みたいだな」
微かに聞こえる会話に、意識が段々とはっきりしてきた。
「死んでんじゃねーの?コイツ」
え?死んでる?
私、死んで……
「い、生きてる生きてる!」
そう叫んで、慌てて飛び起きた。
「あ、起きた」
目の前には、例の4人兄弟。
「えっ?ここ、どこ?」
見渡すと、黒いソファーに大きなテレビ……
どこかの部屋のようだ。
「ここ?車の中だよ」
翔が、笑って答えた。
「もう少しマシな冗談言って下さいよー……」
「いや、ホントに」
「え、これが車?」
なかなか信用しない私を、健が自分の方に引き寄せて言う。
「ここに窓あるだろ」
窓が開くと、私は遠慮がちに窓から顔を出した。
「何この車、長っ!」
普通の道路を走っては、迷惑なのではないかと思う程だ。長すぎてちゃんと曲がれるのかすら心配。
「で、どうして車に……?」
恐る恐る聞いてみると、智が訳の分からない事を言う。
「今、夏だろ?」
「うん」
ん?だから何だ……!
「夏と言えば?」
「え、何いきなり」
乗り気でないあたしを見て、智は眉間に皺を寄せた。
「海だろ、海!」
「はい?」
いつも冷めている智が、珍しく熱いのは気のせいだろうか。