眼鏡の下の素顔のキミは



 ありがとうとさようなら。. ( 1/6 )


そうは言っても,啓悟に別れの話を切り出せるほど私は勇敢じゃない。


別れたい理由なんて全然見つからないし。


でも,私はどんなにチキンでも意気地なしでも,言うって決めたから,啓悟のために言うしか道はないから,私はもう迷わない。


私が啓悟に別れを切り出そうと決めた朝から放課後までは,なんでこんなに早く過ぎ去るのだろう。


いつもならもっともっと遅いのに。


啓悟に会いたくないこんなときだけ時間はさっさと過ぎ去ってしまう。


そんなの,ひどいよ。


いつも通りに掃除を終わらせ,啓悟の待つ校門まで行く。


校門までも足取りがこんなにも重かった日は初めてだ。


こんなことなら,いっそ言ってしまうのをやめようとも思った。


けどそれは自分が怖いからの甘え。


啓悟は私のせいで夢を崩してしまうのはもっと怖い。


だから私の怖いなんてなんともないよ。


重い足取りでたどり着いた校門。


あの黒のマフラー…啓悟だ。


あのマフラー私がプレゼントしたやつだもん。


見間違えたりなんかしない。


あんな安物,ずっとつけてくれてた啓悟。


優しさが滲み出てるよ。



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