不純愛DNA
[確信](1/52)

確信



どうやらヒトにも帰巣本能はあるらしい。


どこをどう帰ったのか。記憶は曖昧でも私はちゃんと家にたどり着いていた。


鍵をかける手間も惜しんで自転車を庭先に横倒しにする。事務所を覗くと運良く皆出払っていて留守だった。


真っ先に向かったのはお姉ちゃんの部屋だった。机の中からミニアルバムを出して開く。当然、写真は前回見た時のまま裏返しにされていた。


台紙から外して表に向けると、記憶していた通りバイクは蛍光の明るいオレンジと黒だった。すぐにスマホで検索をかける。


ビューエルのサンダーボルト。翔平くんが言っていた名前を一字一句間違いなく打ち込んで、画面が開くのももどかしく待った。すぐにヒットしてたくさんのバイクが並ぶ。


なんだ、これ。あまりにも種類が沢山あって小さな画面では違いが全く分からない。


オレンジと黒を追加して打ってみたが、現れたのはオレンジというよりえんじに近い色合いだった。探してみてもこの蛍光っぽいオレンジが見当たらない。


かなり古い型だから?写真の高橋の若さからして20年近く昔のバイクかもしれない。さらに中古で検索してみたけれど同一の物は出なかった。


だったら形から判別しようとしても、そもそも疎い私にはどれも全部同じに見えてしまう。色以外で確かめる術はなかった。


どうしよう。誰かバイクに詳しい友人はいなかったか。大学でもバイク通学の男子が数人いたはずだ。彼らに画像を見せて聞いて回れば。いや、いっそバイクショップの店員に


そこまで考えて苦笑いが漏れた。


高橋翔平にはこれ以上関わらないとさっき決めたばかりではないか。せっかくこうやって逃げてきたのに、また自分から探ってどうする。


古びた写真をまた裏にしてそっと戻した。


これでいい。どういう心境の変化か知らないが、お姉ちゃんだって高橋を忘れようとしてるのだ。パパやママのためにも野上さんのためにも、寝た子を起こすような真似をしちゃだめだ。




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