隣の背中

★conversation in silence(1/11)


「誰のせいですか」

いつもなら授業中にスマホをいじったりなんてしない(勇気がない)けど、今回は違う。

黙ったままやり過ごすのは到底できなかった。

「誰のせい?俺って言いたいんだったら、とっても心外」

私のメッセージに既読の文字が添えられてすぐ、続いた言葉。

思わず立ち上がりそうになったけど、どうにか堪えて顔だけ隣へむける。

怒りを1ミリも隠すことなく、思いきり睨んでいるのに、私より先に顔を横に向けていた矢崎君の笑顔は全く崩れていない。

ごくごく自然に、ゆっくり目線を下に落とした矢崎君がまた、指を動かして、その動きが止まってすぐに私の手の中が揺れた。

「些細な事でヒビ割れる程度の友情しか築けていない人のせい、なんじゃない?」

そもそも例え些細であっても、原因がなければこんな結果が生まれない、とか。

誰もがみんな、あなたみたいに人から好かれる訳ではない、とか。

返してやりたい台詞は浮かんできても、それよりもっと大きなものが指を動かす邪魔をする。

彼の言ってることが、正解なんだと。

悔しくて無意識に噛みしめていた唇が痛みを覚えても、潤む視界はちっとも晴れない。

人を散々振り回しておいて、その上正論でトドメをさしてくる隣の男。

大体、朝だって挨拶しかしていないのに、なんで私が友達の反応に落ちていたのかをあっさり見抜いてくるのか。

あの笑顔が雰囲気を柔らかく、彼をいい奴に仕立てあげているけど、実際の彼は相当タチが悪い。

「モデルしてくれなくていいから、あの絵返してください」

元々クラスで空気な存在感の私を、授業中に気にする人なんていないのが唯一の救いで。

こぼれてくる涙を拭いながらスマホをいじってる姿を、指さして笑われる心配もなく、ただ淡い希望をスマホに託した。
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