森野探偵事務所物語【改】〜想井沢の鬼〜
[第6話 幽霊](1/7)



「…どう?…輝…。」

藍里は、自分が使ってる部屋の隣の、哲也達の部屋にいた。先ほど拾った薬を医者の知識を持っている輝に渡し、どんな薬なのかを調べてもらうためだ。輝は、無言のまま本と薬の番号を照らし合わせて探していた。

「……文庫にはないな…もしかして…。」

そう呟いた輝は、今度は開いていたノートパソコンに向かってカタカタと素早くキーボードを押し始めた。

「…あった!これだ!」

そう言った輝は、藍里に開いているページをみせた。

「なにこれ……?」

「この薬は、主に手術で使われるんだけど、心臓を一時的に止める薬だよ。」

「は…!?」

輝の突然の言葉に藍里は目を見開く。

「あまり知られてないんだけどね、主に注射で薬を注入して、そこから心臓の手術をするっていう……まぁ、すぐにまた動くけど、下手したら死ぬね。」

平然と話す輝だが、聞いてるととんでもない……。

(…これを鬼が落としたとして、なんのために使うんだ?)

1歩間違えれば確かに死に至るが、それを鬼が使うとは思えなかった。
そもそも、今まで確実に殺す方法で殺人を行ってきたわけだから、今
更これを使うとは考えにくい…。






「だから、ほんとになんでもないんだってば!!」





その時、部屋の外からそんな叫び声が聞こえ、2人とも体を飛び上がらせるかと思うほど驚いた。

聞いたところ、女性のものだと伺えるが、陽菜の声ではない。だとすると、このペンションにいる女性はあと1人だけとなる。

「紺野さん…?」

「何か揉めてるみたいだな。行ってみよう。」

輝の言葉にうなずいた藍里は、輝と共に下へと降りていく。






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