「…どう?…輝…。」
藍里は、自分が使ってる部屋の隣の、哲也達の部屋にいた。先ほど拾った薬を医者の知識を持っている輝に渡し、どんな薬なのかを調べてもらうためだ。輝は、無言のまま本と薬の番号を照らし合わせて探していた。
「……文庫にはないな…もしかして…。」
そう呟いた輝は、今度は開いていたノートパソコンに向かってカタカタと素早くキーボードを押し始めた。
「…あった!これだ!」
そう言った輝は、藍里に開いているページをみせた。
「なにこれ……?」
「この薬は、主に手術で使われるんだけど、心臓を一時的に止める薬だよ。」
「は…!?」
輝の突然の言葉に藍里は目を見開く。
「あまり知られてないんだけどね、主に注射で薬を注入して、そこから心臓の手術をするっていう……まぁ、すぐにまた動くけど、下手したら死ぬね。」
平然と話す輝だが、聞いてるととんでもない……。
(…これを鬼が落としたとして、なんのために使うんだ?)
1歩間違えれば確かに死に至るが、それを鬼が使うとは思えなかった。
そもそも、今まで確実に殺す方法で殺人を行ってきたわけだから、今
更これを使うとは考えにくい…。
「だから、ほんとになんでもないんだってば!!」
その時、部屋の外からそんな叫び声が聞こえ、2人とも体を飛び上がらせるかと思うほど驚いた。
聞いたところ、女性のものだと伺えるが、陽菜の声ではない。だとすると、このペンションにいる女性はあと1人だけとなる。
「紺野さん…?」
「何か揉めてるみたいだな。行ってみよう。」
輝の言葉にうなずいた藍里は、輝と共に下へと降りていく。