不思議な夏の物語
[No.4](1/2)
街は夜に近づくにつれ賑やかになってゆく。
そこら中から和楽器の音が聞こえてくる。
「……賑やか。…お祭りみたい…。」
ななはボソっと言った。
凪は自分の隣を歩くななを一瞬だけチラっとみた。
ななの表情はあまり変わらないが妖の世界に夢中だ。
「(……街が混んできたな。早いところこいつを元の世界に戻さなねーと。)」
凪は考えながら黙々と歩いていく。
一方、ななは今も街の風景に目を取られている。
「(本当に昔の日本に来たみたい。
毎日が祭みたいな世界っていいな。
嫌なことも全部忘れられそう…。」
そう思って人混みの中を歩くなな。
しばらく街に目を取られていてハッと気づく。
「(………凪がいない。)」
慌ててあたりを見渡す。
そこまで身長が高くないななは背伸びをしながらも必死に凪を目で探す。
すると6メートルほど先に凪の姿が見えた。
「なっ、ぎ…!」
人混みが激しく、前から歩いてくる人にぶつかる。
ななの声は凪には届かずどんどん遠ざかっていく。
そして、等々凪の姿が完全に見えなくなった。
その時一気にななの不安が大きくなった。
____ くれぐれも凪から離れちゃダメよ。
華に言われた言葉が蘇る。
「(どうしよう。………とりあえずこの人混みを抜けよう。)」
そう思い一生懸命と抜けれる道を探す。
「(あの角を曲がろう。)」
少し先に見える角。
早く抜け出したいとななは思う。
「(あともう少し………!)」
その時、ななの腕に急に痛みが走った。
「ッッ!!」
反射的に腕を抑えた。
抑えた手には液体のような感触がした。
手を見ればそこには真っ赤な血が手のひら一面にべっとりとついていた。
角を曲がったななは危険を感じて駆け足で去ろうとした。
だか、それは上手くはいかなかった。
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