不思議な夏の物語
[No.3](1/4)
ななの目の前に広がる光景。
それは見たこともないもので埋め尽くされていた。
ガヤガヤとして賑わっている昔の日本のような街並み。
そこには"人間"ではない生き物でいっぱいだった。
そして、ななは思う。
ここは"人間"の世界ではなく、
"妖"の世界だということを。
「………ここは…人間の世界じゃない…の…?」
そう呟くように言うなな。
凪はななをチラッとみて言った。
「……ああ。
もし人間が入ったと知られれば大騒ぎになる。
なんだって、お前のような人間がこの世界に入ってくることは珍しいからな。
見つかればきっと高値で売られてしまう。
特にお前はな。」
凪はそう言うと街に向かって歩き出した。
その後を追うようにしてななは凪についていった。
「…俺についてくるのはいいが、
フードとやらはしっかり被れ。
お前は狙われているんだからな。」
「……わかった。」
頷きながらななは言った。
しばらく歩くと、街に入った。
そこにはたくさんの屋台やお店があり、人混みの状態だ。
「いらっしゃい〜いらっしゃい!」
店の人の張った声と、お客の話し声がそこら中から聞こえてくる。
「(ちゃんとついて行かないとすぐに逸れそう…。)」
そう思って必死に凪について行くなな。
すると凪がある店の前で止まった。
その店はたくさんの仮面が置いてあった。
「なんだいにいちゃん?何かお探しで?」
そう問いかけてきたのは犬の耳と尻尾が生えている少し歳がいった女の妖だった。
「……狐の仮面はあるか?」
「ああ!あるさ!こっちのやつと、それからこれとあれだよ!」
そう言って3種類ほどの仮面を見せてくれた。
「………これをくれ。」
そう言いながらこの世界のお金のようなものを渡した。
凪が選んだのは紫色がたくさん入った柄の狐の仮面だった。
「まいどあり〜!!」
買い終わるとその店を離れてまた歩き出した。
「……おい。お前、これをつけていろ。」
凪はななにさっき買った仮面を渡した。
「ありがとう。」
ななは仮面を見つめたまま言った。
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