ココアさん
[はじまり](1/1)




「トシの奴、
やっぱ行方不明なんだって」

「まじか」

「家出じゃねーの」

「いや、俺もよくわかんねーよ、
でも行方不明って」



「そこ!!
しっかり走ってよ!!」


ぴしゃりと怒鳴られ、肩をすくめる。


一緒にだべりながらランニングしてたサッカー部のメンバーも

姿勢をよくして走りに集中し直す。

……フリをする。



「……最近チカちゃん怖くね?」

「ちょっとキてるよな」


2、3人が振り返る。

そこに俺も含まれてるわけだけど、


視界に映った女子マネのチカちゃんこと榊原チカは視線に気づいて目を細めた。


慌てて前を向いて、
走る。


「怖ぇよな、マジ」

「まー仕方ないって」

「前は可愛かったのになぁ」

「言ったんなって」


笑いあって、静まる。



「……マジで大丈夫なのかよ、
トシ」

「………………」

「…走ろうぜ」



気まずい雰囲気。



真っ赤な夕焼け空は、

今の俺たちには響かない。







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