あの日みた蒼き星
[序章](1/5)


遠くで蝉のなく声が聞こえた気がした

「蝉……

ポツリと呟くと、隣で少しばかり眠そうに首を傾げていた初老の男が顔を上げる

……蝉?」

雪が降る如月にそんな訳はないだろうと、聞き返すから、少しだけ重たく感じる口を開いた

「聞こえた気がしたんだよ……みんなと初めて会った日に聞いた蝉の声が……
呼ばれた気がした、そろそろこっちに来い、って」

「まだもう少しいいだろうよ」

ゆっくりとそう言うと、横に座っていたーーは、重ねていた手をぎゅっと握りしめてくれていた

「少しだけ昔話をしてもいい?」

そう問いかけると、ああ、と言って頷いてくれた

「蒼き星の昔話に少しだけ付き合って
今話しておかないと、なんだか……

そう言いながら握りしめられている手を、自分でも握り返した

離さないでとぐずる赤子のようにその手は少しだけ震えている気がした




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