絶対に見てはいけないあとがき

[平沢水源地](1/8)


事前の予想通り、平沢水源地には人っ子一人いなかった。


灯りもまばらな夜の心霊スポットは、不気味なことこの上ない。





遊歩道に入ると、左手側には樹木が鬱蒼と生い茂り、月の光も届かない真っ暗な雑木林。

右手には黒く澱んだ貯水池が広がっている。




「もう8時半近いね。終バスまで2時間もないよ」



隣を歩く恵実華はポケットから携帯を取り出し、そこに表示される時計を見ていた。

周囲の灯りが極端に少なくて、恵実華の携帯画面が眩しく感じるくらいだ。





「北側の廃屋っていうのは記憶にある。ゆっくり往復しても1時間もかからないはずだ。それより、暗いから足元、気をつけろよ」


そう言って、初瀬から借りたペンライトで恵実華の足元を照らしてやる。






水源地南側の入口から、北側の廃屋までは距離にして1kmちょっと。


舗装路なら12〜3分というところだろうが、あいにくとここの遊歩道は足元があまりよくない。

片道20分程度はかかりそうだった。


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